■ はじめに
動画を作りたいけれど撮影も編集も手が回らない、あるいはAIで作った動画がなんとなく安っぽくて出せない、と感じた経験はないでしょうか。動画は今、AIで「作る」ところまでは一気に楽になりました。 本記事では、GoogleのAI動画生成「Gemini Omni」と、自分の分身アバターで撮影なしに動画を作る新機能を手がかりに、広告動画の内製がどこまで変わるかを解説します。スマートエイトは生成AI研修に加え、自社でAI動画台本の生成アプリを開発・運用してきました。 結論として、AIで動画は作れるようになりましたが、そのまま使えるかは別です。差を決めるのは、台本の渡し方と、人が握る手綱の設計です。
1. 何が出たか|GeminiのAI動画生成「Omni」と"分身"アバター
2026年7月、GoogleはAI動画ツール「Google Vids」で、AI動画生成「Gemini Omni」を使えるようにしました。Omni自体は以前から発表されていた仕組みで、今回それが動画ツールに組み込まれ、動画をAIが作り、直すところまで踏み込みました。
1-1. Google Vidsに載った新機能
Google Vidsは、Googleが提供する資料・動画の作成ツールです。そこにGemini Omniが加わり、以前より高品質な動画生成ができるようになりました。 特徴は、できあがった動画を言葉で指示するだけで直せる点です。たとえば「色味を整えて」「アニメ風にして」「映り込んだ余計なものを消して」と頼むと、その場で編集が反映されます。 これまで専用ソフトと時間が必要だった編集の一部が、会話で完結に近づきます。
1-2. 自分の"分身"で撮影いらず
もう一つの目玉が、*パーソナルアバターです。Googleアカウントで本人確認をしたうえで、自分の分身となるアバターを作り、動画の登場人物として使えます。 カメラの前に立たなくても、自分が話す動画を作れるということです。ロールアウトは2026年7月16日から順次で、ビジネス向けやAI Pro/Ultraなどのプランで使えます。 ただし、機能によって地域・言語の制限があります。動画の編集機能は欧州の一部や米国の一部の州で使えず、分身アバターは英語のみ・18歳以上が条件で、欧州の一部では使えません。使う前に自社の環境で動くかを確かめる必要があります。 *パーソナルアバター:本人の見た目を再現した分身キャラクター。撮影せずに「自分が話す」動画を作れる一方、本人確認や地域・年齢の利用条件が設けられています。
2. 「作れる」と「使える」は違う|自社が動画台本アプリで見てきたこと
新機能を見ると「これで動画が量産できる」と感じます。ただ、スマートエイトが自社でAI動画台本の生成アプリを運用してきた経験では、そこに落とし穴があります。作れることと、狙いどおり使えることは別だからです。
2-1. いきなり作らせると失敗する
台本をAIにいきなり「作って」と頼むと、内容が薄く、どこかで見た話になります。スマートエイトのアプリでは、台本づくりをいくつかの工程に分けています。 誰に向けるか、他の動画と何が違うか、どんな順番で見せるか、を先に決めてから台本を書かせます。工程を分けるほど、ありきたりさが減ります。 これは動画に限りません。AIは全体を一気に任せると平均的な出力に寄る、というのが現場の実感です。
2-2. AIが勝手にすり替える・薄くする
運用で実際に起きた事故もあります。参考にさせた題材を、AIが別の題材にすり替えてしまうことがありました。例に出したものと違う話に、いつの間にか置き換わるのです。 また、文字数の下限を指示しないと、台本が短くスカスカになりがちです。「〜が重要です」のような具体のない言い回しも、禁止しないと混ざります。 だからスマートエイトのアプリでは「勝手に代替しない」「抽象表現を使わない」を先に明文で指示しています。動画を作るツールが賢くなっても、狙いを外さない指示は人が用意する必要があります。
2-3. トンマナは真似させ、中身は真似させない
参考にする動画を渡すときにも注意が要ります。スマートエイトのアプリで起きたのは、AIが「話し方の参考」と「中身の題材」を混同する事故です。 過去動画は、テンポや語り口といったトンマナの参考にとどめ、扱う題材はコピーさせない、と分けて指示しないと、内容まで似てしまいます。分身アバターで自分らしい動画を量産するときも、同じ落とし穴があります。 真似させてよいのは見せ方で、中身は自社のものを使います。この線引きを指示に書いておくことが、量産のたびに効いてきます。
3. 広告動画の内製はどこまで変わるか|人が握る3つの手綱
では、広告動画の内製はどこまでAIに任せられるのでしょうか。スマートエイトが支援で使ってきた内製化の流れで整理します。全部が変わるわけではなく、速くなる部分と、人が握り続ける部分に分かれます。
3-1. 内製化の5ステップとAIの担当
広告動画の内製化は、大きく5段階に分けられます。ブランドの設定、シーン割り(絵コンテ)、登場人物の生成、シーンごとの画像生成、画像から動画への変換です。 Gemini Omniのような生成・編集の機能や分身アバターは、主に後半(登場人物・画像・動画化)を速くします。撮影や素材づくりの手間が大きく減る部分です。 一方で、前半のブランド設定とシーン割りは、人の判断が要ります。ここを飛ばして後半だけAIに任せると、速いけれど的を外した動画ができます。
3-2. ブランドと素材は人が握る
AIに丸投げすると、*ブランドセーフティが崩れます。トーンがぶれたり、伝えたい一点がぼやけたりします。速く量産できるほど、ぶれも量産されます。 スマートエイトは、広告運用でAIに任せてよいのは実務の大半でも、ターゲットの除外設定と使う素材の供給だけは人が握る、という線を引いてきました。動画も同じで、何を見せて何を見せないかは人が決めます。 アバターで「自分が話す」動画が量産できるからこそ、発信するメッセージの一点は人が握る意味が増します。 *ブランドセーフティ:ブランドの印象を損なう表現や配信面を避けること。AIに任せきると、狙いと違うトーンや不適切な文脈が混ざる恐れがあります。
3-3. テロップや文字は後で入れる
動画に文字を入れる場面も、AI任せにしないほうが安全です。画像や動画の中に文字を作らせると、崩れやすいという弱点があります。 スマートエイトの実務では、背景や映像はAIで作り、テロップなどの文字は別のツールで後から入れる、という手順を基本にしています。文字が主役の部分ほど、人が最後に整えます。 きれいに動く映像ほど、文字の粗が目立ちます。作る速さと仕上がりの精度を、工程を分けて両立させます。
4. 明日から試す手順|1本の動画で内製を試す
大がかりに始める必要はありません。1本の短い動画で、内製の型を作れます。型ができれば、そのまま本数を増やせます。
4-1. 用途と長さを先に決める
まず、その動画を誰にどこで見せるかと、長さを先に決めます。用途が決まると、構成も話す量も自動的に絞れます。 スマートエイトの台本生成アプリでは、話す速さを1分あたり約350〜400字を目安に置き、必要な文字数から尺を逆算しています。先に長さを決めるほど、後の作り直しが減ります。
4-2. 台本は分解して渡す
次に、台本をいきなり全部書かせず、狙い・構成・本文の順に分けて渡します。1つの塊が長くなりすぎないよう、10〜15秒ごとに区切るのがコツです。 「勝手に別の話にしない」「具体のない言い回しを使わない」を先に伝えると、薄い台本になりにくくなります。ここは前の章で触れた自社の失敗から得た指示です。
4-3. 短く作って人がチェック
最後に、短い尺で一度作り、公開の前に人が必ず確認します。トーンがぶれていないか、伝えたい一点が残っているかを見ます。 うまくいったら、同じ型で本数を増やします。作れる範囲を広げるより先に、使える基準を固めるほうが近道です。
動画の内製は、代理店のAI活用の一領域です。制作・運用・バックオフィスまで含めてどこから着手するかは広告代理店 AI 導入を成功に導く戦略|投資判断から現場定着までで整理しています。
■ さいごに
本記事では、GeminiのAI動画生成「Gemini Omni」と分身アバターを手がかりに、広告動画の内製がどこまで変わるかを解説しました。AIで動画は作れるようになりましたが、そのまま使えるかは、台本の渡し方と、ブランド・素材を人が握る設計で決まります。 「動画を内製したいが、AI任せで安っぽくならないか不安」という段階の企業ほど、この線引きが最初の一歩になります。まずは1本の短い動画から、用途と長さを決め、台本を分解して試すことをおすすめします。 スマートエイトの生成AI研修では、「使える人が一部」のままにしない、業務に落ちる型の資産化を支援します。動画やコンテンツの内製についても、企業規模・業種に合わせて設計可能です。
詳細はお気軽にスマートエイト公式サービスページからお問い合わせください。貴社の状況に合わせた最適な進め方をご提案します。 ※生成AI研修資料/導入事例も無料ダウンロードいただけます。




