はじめに

ChatGPT広告に出稿すべきか聞かれたものの、何をどこまで指定できるのか分からず判断が止まっている、という方は多いのではないでしょうか。解説記事の多くは出稿の手順までで、ターゲティングの範囲まで踏み込んだものが見つかりません。

本記事では、広告主が指定できる項目と指定できない項目を、OpenAIの公式ドキュメントの記述で整理します。スマートエイトは広告代理店向けのAI導入支援を行っており、レポートや計測まわりの運用課題を数多く見てきました。

結論を先に書きます。指定できるのは、地域と、自社の顧客リストと、文脈ヒントの3つです。年齢・性別・興味関心では狙えません。そして当てにいく主軸は設定画面ではなく、広告のコピーとランディングページ側にあります。

ChatGPT広告で指定できること|地域・顧客リスト・文脈ヒントの3つです

地域は国単位で指定します

まず地域です。OpenAIのヘルプによると、Ads Manager ベータはキャンペーン単位の国指定に対応しています。

米国だけは、さらに細かい指定ができます。州、DMA*、郵便番号での指定が可能とされています。日本を含むそれ以外の国は、現時点では国単位までです。

開発者向けドキュメントには「地域を指定しない場合、キャンペーンは配信可能なすべての地域を対象にできる」と書かれています。指定を省くと全域に広がるので、テスト配信では必ず絞ってください。

*DMA:米国で使われる地域区分です。テレビの視聴圏をもとにした広告配信用のエリア単位を指します。

自社の顧客リストを使えます

2つ目が顧客リストです。Custom Audiences*という機能で、メールアドレスや電話番号のリストをアップロードして使います。

用途は3つあります。そのリストの人だけに配信するキャンペーン単位の包含、そのリストの人には配信しないキャンペーン単位の除外、そして広告グループ単位での入札調整です。既存顧客を除外して新規だけに当てる、といった設計ができます。

ただし規模の条件があります。公式ヘルプでは、マッチした利用者が最低25,000人必要で、10万人以上が推奨とされています。条件はアップロードした件数ではなくマッチした人数なので、リストの件数がそのまま通るわけではありません。

手元の顧客リストが数千件の規模なら、この機能は使えません。中小企業の広告主にとっては、実質的に選択肢から外れる条件です。

*Custom Audiences:自社が持つ顧客の連絡先リストから作る配信対象のことです。

文脈ヒントは「完全一致キーワードではありません」

3つ目が文脈ヒントです。広告グループ単位で、自社の商材が関連しそうな会話・トピック・キーワードを記述します。

ここで注意が要ります。公式ヘルプは、これらが「完全一致キーワードではなく、特定の会話での配信を保証しない」と明記しています。

検索広告のキーワードと同じ感覚で設計すると、想定と違う結果になります。文脈ヒントは配信先を確定させる指定ではなく、関連性を判断する材料の1つとして渡すものです。

指定できないこと|年齢でも性別でも狙えません

属性による指定がありません

ChatGPT広告で広告主が指定できることとできないことを2列で対比した図。指定できるのは地域(国単位、米国のみ州・DMA・郵便番号)、顧客リスト(包含・除外・入札調整、最低25,000マッチ)、文脈ヒント(完全一致ではなく配信は保証されない)の3つ。指定できないのは年齢、性別、興味関心と完全一致キーワード

指定できない側も明確です。公式ヘルプの記述をたどる限り、年齢・性別・興味関心による指定は用意されていません。

検索広告のような完全一致キーワードもありません。1-3のとおり、キーワードに相当するものは文脈ヒントで、配信を保証しない材料として扱われます。

つまり他媒体の管理画面で当たり前にある絞り込みが、ここにはありません。既存の運用設計をそのまま持ち込むと、最初の設定段階で手が止まります。

有料プランには配信されません

在庫そのものにも制約があります。「Testing ads in ChatGPT」には「Plus, Pro, Business, Enterprise, and Education tiers will not have ads」と明記されています。

広告が出るのは無料版とGoの成人利用者だけです。有料プランの利用者には、どれだけ予算を積んでも1件も届きません。

これは商材によって効き方が変わります。仕事でChatGPTを日常的に使う担当者や決裁者ほど、有料プランを契約している可能性が高いためです。法人向け商材では、この段階で見送る判断も十分に合理的です。

出せない相手と話題があります

除外は他にもあります。18歳未満だと本人が申告した場合、またはOpenAI側が18歳未満と推定した場合には広告を出しません。

話題による除外も設けられています。健康・メンタルヘルス・政治といった機微な話題や規制対象の話題の近くには、広告を出さない方針です。

医療・ヘルスケア・製薬まわりの商材は、出稿の可否を調べる前にここを確認してください。

当て方の主軸は素材と着地です|コピーとLPがマッチングに使われます

選定に使われるシグナルは5つです

ChatGPTがどの広告を表示するか決める5つのシグナルを示した図。会話の文脈と意図、ランディングページ、広告のタイトル、広告のコピー、文脈ヒントの5つが判断に使われ、このうちランディングページ・タイトル・コピーの3つは広告主が作る素材である

ここがこの記事でいちばんお伝えしたい部分です。公式ヘルプは、広告の選定に使うシグナルとして次を挙げています。現在の会話の文脈と意図、広告のランディングページ、広告のタイトル、広告のコピー、広告主が渡した文脈ヒント、そして広告のパーソナライズが有効な場合は利用者のChatGPT体験全体からの一部のシグナルです。

注目すべきは、ランディングページ・タイトル・コピーが並んでいる点です。広告素材そのものが、誰に見せるかの判断材料になっています。

言い換えると、クリエイティブは「絞り込んだ後に当てるもの」ではありません。クリエイティブが絞り込みの一部です。

他媒体と設計の順番が逆になります

検索広告やSNS広告では、先に配信対象を設定で絞り、そこへ当てるクリエイティブを作ります。設定とクリエイティブは別の工程です。

ChatGPT広告では、この2つが分離しません。指定できるのは地域・顧客リスト・文脈ヒントまでで、残りの絞り込みは素材と着地ページの内容が担います。

したがって改善の打ち手も変わります。配信が想定とずれたとき、触るべきは配信設定ではなく、コピーとランディングページの記述です。

ランディングページの書き方が効きます

ランディングページがシグナルに含まれるということは、そのページに何が書いてあるかが配信に影響するということです。曖昧な訴求のページは、関連性の判断材料としても弱くなります。

具体的には、誰向けの商材か、どんな場面で使うのか、何を解決するのかがページ上の文章として明示されている状態にしてください。デザインの美しさではなく、書かれている内容の話です。

出稿前にページを整える工程は、他媒体でも推奨されますが優先度は高くありません。ChatGPT広告では、これが配信精度に直結する前提の工程になります。

費用と計測|日予算は2,500円から、成果は自社側で取れます

課金は3種類から選びます

課金方式は公開されています。OpenAIの発表と公式ヘルプによると、表示回数あたりのCPM、クリックあたりのCPC、そしてコンバージョン最適化つきのoCPC*の3つです。

oCPCは、支払いはクリックあたりで、指定したコンバージョンに向けて配信を最適化する方式です。認知を広げたいのか、サイトへの流入がほしいのか、成果地点まで見たいのかで選び分けます。

新しい媒体を試す段階では、最初からoCPCを選ぶより、CPCで挙動を見てから移すほうが説明しやすくなります。

*oCPC:コンバージョン最適化つきのクリック課金です。課金はクリック単位のまま、成果が出やすい配信へ寄せます。

日予算の下限は国ごとに決まっています

予算はキャンペーン総額か日予算のどちらかで設定します。日予算には国別の下限があり、公式ヘルプに一覧が示されています。

日予算の下限

日本

2,500円

米国

25米ドル

英国

15英ポンド

カナダ

25カナダドル

オーストラリア

25豪ドル

日本は1日2,500円からです。月換算でおよそ7万5,000円になるため、テスト予算としては現実的な水準に収まります。なおキャンペーン総額の設定は支出の上限であって、配信ペースを制御するものではないと注記されています。

コンバージョン計測の手段は3つあります

計測手段も公開されました。開発者向けドキュメントには、Webページから成果を送るMeasurement Pixel、JavaScriptを使わないImage Tag、サーバー間で送るConversions APIの3つが挙げられています。

集計データはInsightsという窓口から、広告アカウント・キャンペーン・広告グループ・広告の単位で取得できます。媒体側のレポートが薄くて判断できない、という状態にはなりません。

ただし広告主が会話の中身を見られるわけではありません。どんな相談の流れで広告が出たのかは分からないので、そこは自社サイト側の計測で補ってください。媒体をまたいだレポートの整え方は、広告レポートAI活用でWeb広告代理店の生産性を最大化する方法で扱っています。

よくある質問|出稿前に迷いやすい3つの疑問

どんな商材が向きますか?

条件は3つです。利用者がChatGPTに相談する話題の中にその商材のカテゴリが自然に現れること、届けたい相手が無料版とGoの利用者に含まれていること、健康・メンタルヘルス・政治の近くで語られる商材でないことです。

3つとも満たすのは、一般消費者向けで購入前に比較や相談が発生する商材です。逆に、決裁者が有料プランを使っている法人向け商材や、指名検索だけで受注できている商材は、今は見送る判断が妥当です。

代理店として提案するなら、出稿手順よりこの判断そのものを先に共有してください。AI活用を含めた提案の組み立て方は、広告代理店 AI 導入を成功に導く戦略で全体像を扱っています。

Custom Audiences は中小企業でも使えますか?

現実的には難しい条件です。マッチした利用者が最低25,000人必要で、推奨は10万人以上とされています。

顧客リストが数千件の規模では届きません。中小企業の広告主が最初に触るのは、地域指定と文脈ヒント、そしてコピーとランディングページの調整になります。代理店として提案する場合も、顧客リストの規模を先に確認してから設計してください。

日本ではいつから出稿できるようになりましたか?

日本での広告表示は2026年6月19日に始まりました。Impress Watchの報道によると、当初はパイロットとしての展開で、運用のパートナーとして電通デジタルとHakuhodo DY ONEが挙げられています。

OpenAIの公式ページでは、2026年5月7日の更新で日本を含む5か国への拡大予定が示され、2026年8月11日の更新で「has now launched」という記述に変わりました。8月の更新は開始日ではなく、公式の記載が変わった時点である点に注意してください。

さいごに

本記事では、ChatGPT広告で広告主が指定できる範囲を整理しました。指定できるのは地域・顧客リスト・文脈ヒントの3つで、年齢や性別による絞り込みはありません。文脈ヒントも完全一致キーワードではなく、配信を保証しません。

そのぶん、広告のコピーとランディングページが選定シグナルとして直接使われます。設定で絞ってからクリエイティブを作る順番ではなく、クリエイティブそのものが絞り込みになる媒体だと捉えてください。日予算は日本なら2,500円から始められ、コンバージョン計測の手段も揃っています。まず地域を絞り、ランディングページの記述を整えてから、小さく出して確かめる順序をおすすめします。

スマートエイトは、広告代理店の現場でレポートや計測まわりのAI活用を支援しています。生成AI研修では、こうした判断の型を実務に落とすところまで扱います。

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