はじめに

Claude Codeのサブエージェントを使ってみたいが、設定ファイルの書き方から調べ始めて止まっている、という状態はないでしょうか。公式が先に挙げているのは、実は設定ファイルではなく「その場で1文で頼む」使い方のほうです。

本記事では、サブエージェントとは何かを整理したうえで、どの仕事に使えるかの判定と、そのまま貼れる指示文を3つ紹介します。スマートエイトは自社の記事・提案書・開発でこの切り分けを日常的に使っており、本記事の指示文はすべて実際に運用しているものです。

結論から言うと、別に立てて役に立つ場面は3つです。出す直前の検算、長い資料からの抜き出し、意見が割れる相談。どれにも当てはまらないなら、分けずにそのまま頼むほうが速く終わります。

なお設定ファイルの書式そのもの(項目の一覧や書き方)は対象外とし、公式ドキュメントに譲ります。

サブエージェントとは|白紙で始まり、結論だけ返ります

公式はどう説明していますか

Claude Codeの公式ドキュメントは、サブエージェントを「特定の種類のタスクを処理する特化したAIアシスタント」と説明しています。

使いどころも書かれています。後で参照しない検索結果やログ、ファイルの中身で本来の会話が埋まってしまうような作業に使い、その作業は自分のコンテキスト*の中で行って要約だけを返す、という説明です。

分離の度合いも明記されています。各サブエージェントは新しい独立したコンテキストで始まり、こちらの会話履歴も、すでに呼び出したスキルも、AIがすでに読んだファイルも見えない、と書かれています。

つまり、こちらの会話とは切り離された場所で働き、結論だけを持って帰ってきます。この分離が、次章で出てくる「見直しが効かない問題」を解きます。ただし同じ仕組みが制約にもなります。

*コンテキスト:AIが今のやり取りで覚えている範囲のこと。ここに前の答えが入っていると、次の答えが引きずられます。

途中でこちらに質問できません

分離の代償がこれです。

公式ドキュメントによると、利用者に質問するための道具はサブエージェントから外されます。設定で許可しようとしても外されます。こちらに返ってくるのは、最後の結果だけです。

つまり、渡したあとは口を出せません。途中で「この場合はどうしますか」と聞かれることも、こちらから軌道修正することもありません。

同じ会話で見直させても通ってしまう|なぜ別に立てるのか

「間違いがないか確認して」と同じ会話で頼むと、多くの場合は「問題ありません」が返ります。

理由は単純で、その会話の中には自分が直前に出した答えが残っているためです。AIはそれを前提として読み直します。人が自分の原稿を読み返すときと同じ状態になります。

見直す側に、前の答えを見せない必要があります。

作る人と検査する人を分ける、という考え方自体は目新しいものではありません。AIが作った資料のどこを人が見るべきかについては、ChatGPTで資料作成|そのまま出せたのは43.3%という実測の読み方で扱っています。足りないのは方針ではなく、その場でどう切り出すかの手順のほうです。

使いどころは3つです|そのまま貼れる文面つき

別に立てて役に立つ場面は、実際には3つに絞られます。出す直前の検算、長い資料からの抜き出し、意見が割れる相談です。文面はそのまま貼れる形で載せます。

書き方に2つ共通点があるので、先に押さえてください。

1つ目は「サブエージェントを立てて」から始めることです。設定ファイルを置いた場合は、Claudeが説明文を読んで自動で振り分けます。設定ファイルが無い場合も自動で分かれることはありますが、こちらから名指ししない限り、分かれるかどうかはClaudeの判断に委ねられます。公式が挙げている例も、ほとんどが文中でサブエージェントを名指ししています(並行調査の例だけは文末で指定しています)。確実に分けたいなら、こちらで書いておくほうが安全です。書かずに済ませると、見た目は同じように動くのに分離だけが起きないことがあります。

2つ目は返ってくる形を先に指定することです。空けたまま頼むと長い説明が返り、読む手間が増えて切り出した効果が消えます。

その場で頼む3つの型を「渡すもの」と「返ってくるもの」で並べた早見表。検算する・抜き出す・意見を割るの3列

出す直前の検算|書いた本人に採点させない

原稿や資料を外に出す直前に貼ります。

サブエージェントを1体立てて、いま渡した原稿を検算させてください。
書いた本人とは別の担当として見てもらいます。
見るのは次の3点だけです。

1. 数字が出典と一致しているか(一次ソースに当たること)
2. 本文の数字と、要約・見出し・冒頭の記述が食い違っていないか
3. 出典が確認できない主張はどれか

推測で補わないでください。確認できないものは「確認できず」と書いてください。

返すのは直すべき箇所の一覧だけにしてください。
各行は「該当箇所/何が違うか/どう直すか」の3つで書いてください。
問題が無ければ「なし」とだけ返してください。

3番目は「出典が確認できない主張と、出典より強く言い切っている主張」と書くほうが拾えます。実測が3件しかないのに「必ずこうなる」と書いてしまう型は、出典が無いわけではないので、数字の一致だけを見ていても出てきません。2番目は、表と本文の要約が食い違う型を拾います。

「推測で補わないでください」も外せません。これが無いと、確認できなかった箇所をもっともらしく埋めた文章が返ってきます。

この検算を毎回その場で頼むのが面倒になったら、時刻や条件で自動的に呼ぶところまで進められます。その組み方はClaude Codeで業務を自動化する方法|7つの実例と最初の1本の選び方で扱っています。

長い資料から、必要な箇所だけ抜き出す

商談の記録を提案書の素材にするときに使っています。要約を読んでいる限り、相手が実際に使った言葉は手に入りません。

サブエージェントを1体立てて、この記録の全文を読ませてください。
次に当てはまる発言だけを、言い換えずに原文のまま抜き出させてください。

条件:相手が自分の言葉で困りごとを話している箇所
(一般論と、こちらの説明への相槌は除く)

返すのは、抜き出した発言と話者の立場(依頼側・現場など)だけです。
要約は要りません。全文をこちらに返さないでください。

最後の1行が肝心です。これを書かないと全文が戻ってきて、分けた意味が消えます。公式が挙げている「後で参照しない中身で会話が埋まる作業」が、まさにこの状況です。

1回の商談記録は1万語を超えることがあります。読むこと自体は必要ですが、手元に置いておく必要はありません。

意見が割れる相談を、複数の視点で受ける

値付けやスコープのように、正解が1つに定まらない相談で使っています。

結論は割れていても構いません。進め方のほう(4つの視点で出す、統合する、1問だけ返す)が最初から固定なので、途中でこちらに聞き返す場面がありません。別に立てるのは、視点どうしが互いの答えを読まないようにするためです。決まっていないのは答えであって、手順ではありません。

戦略・価格・顧客心理・リスクの4つの視点を、別々のサブエージェントとして
1つのメッセージで同時に立ててください。
それぞれ独立に意見を出させてください。

全員の意見が揃ったら、統合した答申(結論→根拠→リスクと対処)を返してください。

最後に「次に決めるべき1問」だけを、推奨回答を添えて聞いてください。
複数の質問を並べるのは禁止です。

「1つのメッセージで同時に」が肝です。順番に走らせると、後から動く視点が前の答えを読んでしまい、独立が壊れます。公式ドキュメントも、互いに依存しない調査であれば複数を同時に動かす使い方を挙げています。

最後の1文が無いと、論点が5個並んだ状態で返ってきて、結局こちらが整理し直すことになります。

分けなくてよい場合と、設定ファイルにする時期

3つに当てはまらないなら、そのまま頼むほうが速い

分けること自体が目的ではありません。本体の会話で読み切れる量で、書いた本人に見せても困らない作業なら、そのまま頼んでください。

公式ドキュメントも、応答の速さが重要な場面では分けないほうがよいとしています。サブエージェントは新しく立ち上がるぶん、返ってくるまでに時間がかかる場合があるためです。

途中で相談が要る仕事は渡せません

3つのどれかに当てはまったとして、渡せるかどうかはもう1つで決まります。渡した材料と指示だけで最後まで行けるか、それとも途中でこちらに聞き返す必要があるか。仕事の重さでも、種類でもありません。

これから何を書くかが決まっていない資料作成が、渡せない側の代表です。書きながら方向を決める作業では、相談そのものが仕事の中身になります。渡すと、方向のずれた完成品が一度に返ってきます。

仕事を切り出せるかどうかの判定フロー。渡した材料と指示だけで最後まで行けるなら切り出し、途中で判断が要るなら手元に残す

「読む作業は任せられるが、書く作業は手元でやるべきだ」という線引きも見かけます。スマートエイトも以前はこの基準で運用していましたが、誤りでした。社内の1か月分のセッションを数えたところ、309件のうち実装を別の担当へ渡した回数がゼロだったのです。品質のためではなく、いつ渡すかを決めていなかっただけでした。2026年8月に既定を逆にしています。

分かれ目は書くかどうかではありません。渡す時点で決まっているかどうかです。

繰り返しが出てきたら、設定ファイルへ移す

公式ドキュメントは、同じ種類の作業を同じ指示で何度も呼び出すようになったら設定ファイルを作る、という順番で書いています。設定ファイルは入口ではなく、繰り返しが出てからの効率化です。3章の文面を何度も貼るようになったら、そのときに移せば十分です。

移すときは工程ではなく役割で切ります。調べる、裏を取る、提案を組む、記事を書く、レビューする、といった単位です。そのうえで、割り当てるモデルを3段階で決めます。

  • 取りに行く仕事(調査・裏取り)は安いモデル。読む量は多いが、判断はそれほど要らない
  • 考える仕事(戦略・提案・執筆)は上位モデル
  • 検収する仕事(レビュー・粗探し)は本体と同じモデル。ここだけは落とさない

3つ目が効きます。指摘の鋭さがそのまま成果物の合否になるので、検算役まで安くすると分けた意味が薄れます。

よくある質問|使う前に

途中で方針が変わりそうな仕事はどうすればよいですか

切り出す前に、方針を決める部分だけを手元で片付けてください。

4-2の基準に照らすと、方針が動く段階はまだ渡せません。ただし段階を分ければ渡せるようになります。何を作るかを手元で確定させ、確定したものを渡す。開発で境界を決めてから実装を渡すのと同じ形です。

体を増やすと費用は比例して増えますか

増える方向です。ただし比例するとは限りません。

読み込む量によって変わるためです。4-3で触れたモデルの割り当ても効きます。具体的な料金や上限は変動するため、契約中のプランの公式情報で確認してください。

費用に見合うかの判断は、体の数ではなく人の手間がどれだけ減ったかで見ます。測り方は生成AIの費用対効果を測る4つの問い|OpenAI CFOの採点表の使い方で扱っています。

ChatGPTで賛成派と反対派を演じさせるのと何が違いますか

同じ会話の中で役を演じ分けさせる場合、どちらの役も同じ文脈を見ています。直前に出た結論が両方に影響します。

切り出す場合は、それぞれが白紙から始まります。演じ分けとの差はここだけですが、答えが割れるかどうかに効いてきます。

検算役が「問題なし」と返したら信用してよいですか

そのままは信用しないでください。検算役が見ているのは、こちらが指定した範囲だけです。

3-1の文面であれば、数字・食い違い・出典の3点しか見ていません。文章の分かりやすさや、主張そのものの妥当性は範囲外です。何を見せていないかを把握したうえで受け取ってください。

AIに任せる範囲と人が残る範囲の線引きは、スマートエイトの生成AI研修でも実際の資料を題材に扱っています。→ 生成AI研修の詳細

さいごに

本記事では、サブエージェントとは何かを整理し、そのまま貼れる頼み方を3つ紹介しました。使いどころは検算・長い資料からの抜き出し・意見が割れる相談の3つです。

渡せるかどうかは、渡した材料と指示だけで最後まで行けるかで決まります。読むか書くかでも、重いか軽いかでもありません。方針が固まっていない資料作成は、この基準で渡せない側になります。

「AIに確認させても素通しされる」「どこまで任せてよいか判断できない」という状態にある企業にとって、必要なのは新しい方針ではありません。切り出せる形に仕事を整えることと、その場で呼ぶための文面です。

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